直流安定化電源『Kungber SPPS–3010』開封│レビュー
ステイホーム=家の中でできるコトを探りつつ始めた DIY工作室。
興味の趣くまま作ったり直したり弄ったりしていく中で、揃えた道具や工具などを紹介。
第十九回は『直流安定化電源』。
安定化電源の予習
1 主な用途
安定化電源装置は、設定した電圧の直流電気を常に安定して供給する装置。
3.3V~5.0V~12.0Vなど、電圧を自由に変えて供給させることができる。
- 電子工作の電源
- 理科教材の電源
- バッテリーの充電
- ミニ四駆などモーターの慣らし運転 etc…
2 回路の方式
直流安定化電源には大きく分けて2種類の回路方式があるとのこと。
1.スイッチング方式
- 装置全体のサイズが小さい ※ドロッパ方式に比べて
- 重い変圧器を内蔵していないので軽量
- スイッチング(ON/OFF)動作で直流を作る性質上、ノイズが発生しやすい
- 発熱は少ない
- あまりノイズを気にしなくてよい電子工作やDIY修理などに利用できる
2.ドロッパ方式
- 装置全体のサイズが大きい ※スイッチング方式に比べて
- 鉄芯と銅線コイルのトランスを内蔵しているため重量がある
- ON/OFF動作をしないのでノイズは発生しにくい
- 変換時に発熱があり冷却ファンの音も発生する
- ノイズの影響を受けたくない無線機の電源や実験用途に向いている
3 その他
その他にも外観や機能に様々な仕様がある。
- 電圧(V)や電流(A)の表示窓がアナログかデジタルか。
- 本体が縦長デザインか、横長デザインか。
- 出力がシングルレンジか、ワイドレンジか。
- 設定を記憶しておけるメモリ機能の有無
などなど。
DIY用途の安定化電源
今回はDIY工作や修理に使いやすい条件をあげてみた。
- 電圧は0~12.0V以上・・・乾電池1.5Vから充電器用12Vまでカバー
- デジタル表示・・・見やすい方が良い
- メモリ機能付き・・・よく使う設定をすぐ呼び出せる
- 主電源スイッチが前面パネル・・・本体裏にあると使いにくい
- 値段・・・安いに越したことはない
そして今回、海外製品の Kungber SPPS3010を試してみることに。
SPPS-3010
1 特徴
- 300W仕様
- 出力電圧 00.00V~30.00Vの範囲で調整 ※4桁表示
- 出力電流 00.00A~10.00Aの範囲で調整 ※4桁表示
- 電圧/電流の調整は1つのツマミを共用
- [V/A]ボタンを押すことで調整対象(電流または電圧)を切り替え
- ダイヤルを1回押し込む毎に調整する“桁”を選択
- メモリーに4セット分の電圧/電流値を記憶可能
- 自動温度制御冷却ファン付き ※温度50℃で作動
- 保護機能付き ※
※漏電保護、 過熱保護(OTP)、電圧過負荷保護(OVP)、電流制限保護(OCP)
2 開封
Amazonで購入。
外箱ダンボールに荷札伝票を直貼りされて届いた。
1.付属品
付属品は、ワニぐちケーブル赤と黒、100V電源ケーブル、取扱説明書。
ワニ口ケーブルの長さは約1m。
ワニ口の反対側は4mmΦバナナプラグになっている。
電源ケーブルの長さは約1.2m。
日本の家庭用電源プラグ仕様アース付き。
2.説明書
説明書は一応日本語。
メモリー設定方法などが書かれているが、詳しい使用方法などは載っていない。
3.外観
正面から。
左側にディスプレイ、中央にメモリーボタンや出力ボタンが並ぶ。
右端の大きいダイアルは電圧量/電流量 兼用の調節ツマミ(ノブ)。
側面。
背面。
主電源も含めて前面パネルに集中しているので、背面にスイッチ類は無い。
底面。
4.サイズ
筐体の大きさは、幅170mm×奥行233mm×高さ83mm(ツマミ突起を含まず)
重さは1365g。
「安定化電源=重い」というイメージだがサイズの割に軽く感じる。
3 準備と電源
1.電源プラグ
100V電源ケーブルは分離式。
3極プラグになっている。
2.主電源スイッチ
主電源は前面パネルの右下隅にある『POWER』ボタン。
『POWER』ボタンを押し込むと、
左上にあるCV定電圧インジケータ兼パイロットLEDが点灯し、
2秒ほどで起動する。
3.操作パネル
前面パネルの配置。
メモリーのM1~M4には、4つの設定値を記憶させておくことができる。
右端の大きな調整ノブで電圧と電流を可変。(兼用)
4 使用方法
1.メモリー設定
調節ツマミ(ノブ)操作 その1-まわす
メモリーM1に「3.0V/1.0A」を記憶させてみる。
工場出荷時の設定が「5.0V/1.0A」になっていたので、電圧のみを変更する。
手順① 設定を記憶させたいメモリーボタン、今回は[M1]を1回押す。
手順② 続けて[V/A]ボタンを1回押して“電圧値設定モード”にする。
・・・すると電圧(V)表示の下1桁が点滅を始める。
[V/A]ボタンを2回押してしまうと電流値(A)が点滅し“電流値設定モード”になってしまうので、電圧(V)が点滅していることを確認する。
手順③ [電圧/電流]調節ツマミを回して数値を変える。
・・・左に回せば数値が下がり⤵ 右に回せば数値が上がる⤴。
・・・今回は3.0Vにするので、調節ツマミを左に回し続けて下げていく。
・・・希望の電圧値になったら操作を止める。
手順④ もう一度メモリーボタンM1を押して設定を記憶。
これでメモリーM1に、3.0V/1.0Aが記憶される。
調節ツマミ(ノブ)操作 その2-おしこむ
次に、メモリーM2に「5.0V/1.0A」を記憶させてみる。
M2の工場出荷時の設定が「12.0V/5.0A」だったので、ここから変更していく。
手順① 設定を記憶させたいメモリーボタン、今回は[M2]を1回押す。
手順② 続けて[V/A]ボタンを1回押して“電圧値設定モード”にする。
・・・電圧(V)の1桁目が点滅していることを確認。
数値が点滅している約3秒の間にスイッチやボタンの操作が無いと設定モードから通常モードに戻ってしまうので、設定はすばやく行う必要がある。
手順③ すぐに調節ツマミを押し込む(回さずにプッシュする)。
・・・調節ツマミを1回押し込むと、電圧(V)の点滅が2桁目に移動する。
・・・さらにもう1回押し込むと、点滅が3桁目に移動する。
手順④ 調節ツマミを回して電圧値を変える。
・・・今回「5.00V」にしたいのでツマミを回して3桁目を「5」にする。
・・・同じように調節ツマミを押し込んで4桁目を点滅させて、
・・・そのままツマミを回して4桁目を「0」にする
手順⑤ [V/A]ボタンで“電流値設定モード”に切り替える。
・・・電流値(A)が点滅していることを確認。
手順⑥ 調節ツマミを押し込む。
・・・調節ツマミを3回押し込むと4桁目が点滅する。
手順⑦ 調節ツマミを回して電流値を変える。
・・・1.000Aに設定完了。
手順⑧ 電圧と電流の設定値をメモリM2に記憶させる。
手順⑨ 同様にしてM1からM4まで4つの設定をメモリー。
M1 M2 M3 M4 ボタンを押すだけで設定が呼び出せる。
2.ケーブル接続と出力
安定化電源の出力確認のためにマルチテスターを用意。
安定化電源側の赤(+)ケーブル線と黒(マイナス)ケーブル線を、テスターのプラス/マイナスリード線にそれぞれつないでおく。
手順① 主淵源オフを確認してから、出力端子にケーブル(バナナ端子)を接続。
真ん中のGND端子は使用しないのでケーブルは挿さない。
※GND端子は工作程度ではたぶん使わないのでパス
手順② 使用するメモリボタン(例ではM1)を押してから
手順③ 出力[ON/OFF]スイッチを押す。
・・・出力ボタンを押すと、設定した電圧(例では3.0V)が供給される。
・・・メモリーM2に設定した5.0V。
・・・メモリーM3に設定した12.0V。
・・・メモリーM4に設定した32.0V。
5 仕様と性能
1.仕様
製品の仕様は次の通り。
- 入力電圧: 115V±10% 60Hz
- 作動温度: 0℃-40℃ 相対湿度: <80%RH
- 定電圧状態電圧安定性:≦0.1% ±3mV 定電圧:≦0.2% ±3mV
- 表示精度: 0.5%±2桁
- ディスプレイ分解能電圧: 00.01V / 電流: 0.001A
2.性能
2台のSPPS-3010を用意して、製品誤差を調べてみた。
設定電圧はどちらも12.0V。
左側の3010はテスター値で11.93V。
対して右側の3010はテスター値で11.97V。
どちらも「12.00V」の設定であるが、7/100V~3/100V低めの測定値となった。
まとめ
使用感
安定化電源の設定といえば、[CORSE]と[FINE]2つのツマミを回して設定する機種が多いが、この製品はツマミ(調節ノブ)を1つだけにして簡素化している。
使い勝手の良さは一長一短があって一概には言えないが「ツマミをプッシュして可変させたい“桁”を選び、そのままツマミを回して数値を変更」という手順に慣れてしまえば、それはそれで使いやすい。
良いところ
1)主電源スイッチも供給ON/OFFスイッチも前面にあるので使いやすい。
2)4つの設定をメモリーしておけるので便利。
3)ディスプレイは眩しすぎず見やすい。
4)黒い筐体、白い筐体、2色から選べる。
良くないところ
1)中身にかなり空洞スペースもあるので、もっと小型化できそう。
2)調節ノブ(ロータリースイッチ)を回す感触が軽すぎて安っぽい。
3)調節ノブの反応が悪く、回しても変わらなかったり数字飛びしたりする。
4)電圧の精度があまり良くない。 ※下記詳細
精度について
安定性について仕様書によれば、定電圧時「0.1%」 低電圧時「0.2-0.3%」とある。
しかし0~30Vまで出力する本機の「低電圧」ラインが説明書には記されていない。
なので、どこまで「0.1%」で、どこから「0.2-0.3%」なのかよく判らない。
精度について概算してみる。
仮に12.00Vを低電圧とするなら不安定度0.3%=0.036Vになる。
つまり下は11.964V~上は12.036Vの範囲で振れ幅があるという意味。
それに加えて±0.003Vの誤差があるらしいので、12.00Vの設定でも実際は11.961V~12.039Vの幅があるということになる。
実際はどうか。
上記で調べたSPPS-3010 2台のテスター結果を見てみると、
実測値は「11.93V」と「11.97V」だった。
1台は「11.97V」でギリギリ範囲内、もう1台は「11.93V」で範囲外。
(もちろん計測したテスターの精度も考慮しなくてはいけないが)
製品について
上記テストで、設定12.00Vが実測11.73Vだったからと言っても、ほぼ12V。
趣味工作DIY用途なら問題ないレベルと言える。
しかし実測値が、仕様書にある性能範ギリギリというのはあまり気持ち良くない。
どんな機械にも誤差はつきものだけど、この製品は当たり外れ?があるかも知れない。
外装の質感やスイッチの操作感なども日本製品に比べるとかなり見劣りする。
特に電圧/電流を微調節するツマミは一番触れる部分だし、こだわりたい部分。
しかしツマミの回転に抵抗感が無くクルクル軽く回るし(少しノッチ感はあるが)
真円でないのか、芯ブレしたような回り方をする。
中華品質と言えばそれまでだが、とにかく出来は安っぽい。
まとめ感想
実売額は約9000円。
この価格帯で競合する国産メーカーは多く無く、他に選択肢が無い現状ではあるが、やはり品質と性能のバランスは微妙なところ。
しかしもし故障したら?
たぶん同じ製品は買わないかも知れない。
前面スイッチやメモリーなど良いところも勿論あるのだが、“新しさ”には欠けている。
もっと改良された次期モデルに期待したい。
海外には窒素ガリウム(GaN)を使った電源も出ていれるようで興味をそそられる。
いずれそちらを試してみる予定。