オーロラLED『光って回るディスプレイ』ノイズ対策│その手順
元スイッチを改良した“マジカルスピナー”の回転テーブル。
紹介記事は ⇒ こちら。
次に気になり始めたのが動作音。
回転スイッチを入れると「ジジジジ…」という機械音が発生する。
静かな室内では結構気になる音なので、改善できないか対策を検討する。
対策その1
機械モノで先ず思いつくのは“注油”。
動いてる部品のどこかにオイル切れがあれば異音が発生することになる。
まずはこれを確かめる。
1 モーターユニットの分解
本体を裏返し、3か所のゴム足の奥にあるビスを緩める。
前回の改良で追加したON/OFFスイッチ(詳細は ⇒ こちら )のリード線が渡っているので注意しながら本体を分割する。
先ず、ゴム製の黒い駆動ベルトと黒いギアを外す。
次に、2か所ある固定ビスを緩めてモーターユニット(白いプラスチック)を土台(黒いプラスチック)から分離させる。
さらに4か所あるモーターユニットのビスを緩めて、ユニットを解体する。
ユニットを開くと、ギアボックス(左)、モーター(右)が見える。
各ギヤは金属の軸棒に刺さっているだけなので、指で簡単に抜くことができる。
2 ギアの分解
耳障りな音の原因はギヤ周りのオイル切れでは?
と疑ってギヤボックスを分解してみたが…
ユニット内のギアにはちゃんとグリスが塗られていた。
また特にギアの噛み合わせが悪い部位もなく、指で回してみても軽く動く。
異物が混入していることもギアが汚れていることも無かった。
確認のため、この状態のままモーターを回しても「ジー」という微かな音のみ。
異常に感じるノイズは無いように感じた。
3 ユニット内のグリスアップ
それでもせっかく分解したので、新しくグリスを塗りなおしておく。
今回使用したグリスは、タミヤの『Fグリス』。
「固体の中で最も摩擦係数の低いフッ素樹脂PTFEの微粒子を配合(略)低温でも硬くなりにくく高温での潤滑性能にも優れる」という、TAMIYAミニ四駆メンテナンス用の商品。
高速回転するミニ四駆のギヤに対応しているグリスなので、ゆっくり回るターンテーブルのギヤくらい余裕のはず、という理由で選択。
樹脂製のギアを1つ1つ外して、古いグリスを拭き取ってクリーニング。
その後でギアの歯車にていねいに新しいグリスを塗っていく。
まずはギヤのシャフトから。
ギヤを1枚ずつ組み立てながら、歯車にグリスを塗っていく。
ギヤボックスの上蓋側にあるギアも忘れずに。
ギヤユニットの上蓋をかぶせて戻し、ネジも締めなおす。
最後は黒いドライブギアにもたっぷり塗る。
4 ターンテーブルの分解
ターンテーブルをまわす回転ギアがターンテーブル裏側にある。
その噛み合わせチェックのため、上蓋を分解する。
透明レンズの外周に4か所、差し込み式のツメがあるので内側に押さえながら外す。
プラスチック素材が柔らかく脆いので折ってしまわないように。
蓋を開けると内部に小さな金属球が5コ仕込まれている。
無くさないよう気を付けながら作業。
写真⇩ ターンテーブル部を上下に二分割
ターンテーブル下側に玉受け(ベアリング)がある。
この金属球まわりの古いグリスを拭き取る。
金属球を全て外して個々にクリーニング。
金属球の受け穴の中の古いグリスも綿棒などでクリーニング。
5 ターンテーブルのグリスアップ
拭き取りが終わったら、新しいグリスを塗り込む作業。
ここで使用したのはタミヤの『アンチウエアグリス』。
ターンテーブルは約60秒で1回転する仕様。
ゆっくり回る構造だが、カタログ上の耐荷重は3kgとなっているので、特に金属球ベアリングには高負荷がかかるはず。
なので、「高粘度で潤滑、耐磨耗性に優れている」という性能を期待して選択。
穴にグリスを詰めたら金属球を戻す。
次にターンテーブル上側の外周ギアまわりに、同じようにグリスを塗布。
外周ギアの相手側=黒いギア(モーターユニット)にもグリスを塗っておく。
【注】後日ベアリング故障のため“アンチウエアグリス”の使用を中止した
➡ 詳細はこちら。
6 組み立て復元
全てのグリスアップが終わったら、ターンテーブルの上と下を元通りにはめ込む。
固定ネジとゴム足を戻して完成。
7 ノイズ測定
動作音を測定してみる。
室内環境 35.5dB 下。
至近距離で測った結果は・・・53.5dB。
モーター自体の「ブーン」という音ではなく「ジジジジ…」という機械音である。
実際のところ、グリスを塗りなおす前の数値は55db前後だった。
数値的にほんの少し変化したとはいえ、誤差の範囲。
音質が変化した様子も無し、グリスを換えてもほとんど変わらない結果に。
対策その2
グリスの塗り替えで解決にならないのなら、他の方法も探ってみる必要がある。
なので再度、本体を分解して考えてみる。
1 再び本体の分解
本体を分割し、モーターユニット剥き出しの状態でノイズを測ってみた。
室内環境は 35.5db。
上部(蓋)が有るか無いかの違いで、53.5dbから6dBのアップである。
2 モーターユニット本体のノイズ
本体からモーターユニットを外して、ノイズ測定してみる。
すると 46.5dbという10db以上も低い値だった。
これはつまり・・・
モーターユニット単体では 46dbのギヤ音が、本体に固定されることで音(振動)が増幅されて外部に「ジジジジ」ノイズとして増幅共鳴しているのかも?
3 制振対策
そこで、モーターユニットと本体ベースの間に何かの緩衝材(いわゆるインシュレータ)を挟んで制振すればノイズを低減できるかも?ということで試してみる。
1.ゴム製Oリング
モータユニットを固定しているネジは2か所。
そこにゴム製Oリングを挟んでからユニットをネジ止めしてみる。
測定結果は、57.3dB。
元の状態より平均 2db低くなったが、実際に聞いても変化は判らないほどの僅差。
2.両面テープ
Oリングは外し、モータユニットの裏に挟めそうな薄い素材を探してみた。
選んだのは 3M製『スコッチ 強力両面テープ KCW-12』。
材質がアクリルフォームで柔らかく弾性があるのが理由。
これをクッション=制振板の代わりにと考えた。
測定結果は、47.5dB。
元の状態の 59.5dBより12dBも軽減した!
たった厚さ1mmでも効果あり。
これは良いかも!と勇んで本体を組み立て、改めて測定。
しかし・・・
改めて測れば、何故か 51.3dBという結果だった。
なかなかうまくいかない。
元の状態が 53.5dB。
そして両面テープ制振対策で 51.3dB。
分解してグリスを塗り直したりテープ貼ったり工夫しても、誤差の範囲程度しか変わらなかったという顛末・・・無有・・・
3.結論
その後も別のスポンジ板を挟んでみたり厚みを変えてみたりもしたが大差無かった。
この品質と構造上、機械ノイズを無くすことは難しいのかも知れない。
そもそも「made in China」だし・・・
しかし気づいたことがある。
数台購入したこの『LEDターンテーブル』、ノイズの聞こえ方に個体差がかなりあるという事実。
つまり!
10台買えば1つや2つ静かな動作音の製品に巡り合えるのである。
あれこれ防振素材や潤滑剤を揃えて苦労するより、返って安く済むのかも。
おまけ タミヤのグリスについて
今回の工作に限らず、タミヤのグリスはとても便利なアイテム。
ミニ四駆あるいたRCモデル用グリスとして何種類かラインアップされているが、ほかにも応用できる高品質なグリスになっている。
セラミックグリス・・・樹脂、ゴム、金属などに幅広くサラっと薄く塗れる潤滑油
モリブデングリス・・・摩擦抵抗の少ない二硫化モリブデン配合で回転部の摩擦を防ぐ
アンチウエアグリス・・・高粘度で潤滑、耐磨耗性に優れ高温時でも柔らかくなり難い
フッ素グリス・・・摩擦係数の低いフッ素樹脂で高温での潤滑性能に優れる
セラミック
87099 |
モリブデン
87022 |
アンチウエア
53439 |
Fグリス
15383 |
|
成分 | 窒化ホウ素 | 二硫化モリブデン | 未公開 | フッ素樹脂PTFE |
特徴 | 低粘度、白色
薄く塗りやすい |
中粘度、黒色
高速回転部分の低摩耗 |
高粘度、灰色
耐摩耗性 高温で溶け難い |
低粘度、乳白色
低温でも硬くなり難い |
用途 | 樹脂やゴムにも使用可
自転車チェーンなど |
RCモデルのギヤ
PC冷却ファン軸など |
RC模型のuniジョイント
ギヤデフ注入など |
樹脂ギヤ 軸受け
釣リール エアガンなど |
どのグリスもプラスチックにも金属にも使える多用途仕様になっている。
その上で、さらにプラスチックに適したもの、金属に適したもの、高速部分に適したもの、温度に強いものなど、用途によって使い分けできる種類が揃っている。
模型や玩具のみならず、家電メンテナンスや釣具リールやDIY修理にも便利である。