『KSC75 ヘッドホン ドライバユニット』パーツ解体│その手順
前回パーツを分解してみたKSC75X。
今回はドライバーの奥を覗きたく解体してみることにした。
KSC75’X’とKSC75は色が違えど中身は一緒。
massdrop ver.の方は勿体ないので、調子の悪いKSC75を検体にした。
ユニットの分解
ケーブルを取り外す
もう10年以上使っているKSC75。
今後の修理や改造のために、思い切って解体することに。
イヤーハンガーを外し、
イヤーパッドも外す。
基板のカバーも外す。
ドライバ解体のために邪魔になるので、端子からケーブルも外す。
接着剤を調べる
はんだ付けされていた基板には、薄い黄色の接着剤が盛られた場所がある。
エポキシ系のパテの様にも見えるが、ピンセットで摘まんでみると弾力がある。
引っ張ると少し伸びたりもするのでゴム系の接着剤かも。
おそらくこの下に、リード線?があって、ハウジングフレームにある溝(切れ目)を通って内部のコイルに繋がっているはず。※
「接着剤の下に線があるはず」という前提で丁寧に接着剤を剥がしてみる・・
あった。
しかし! ・・・ 切れていた。
こんなに細いなんて。
接着剤は上辺だけで、その奥でフレームに沿ってコイル線があるだろう・・・と勝手に想像していたのだが違っていた。
ガムみたいな接着剤の中に配線が埋まった状態だった。
これじゃ接着剤を剥がしたら一緒に切れるのは当たり前。
ドライバの分解
コイルを調べる
接着剤を剥がす作戦は失敗。
攻め方を変えてコイル側を分解することにした。
1.プロテクター板
まず振動板プロテクター板を外す。
外すポイントはフレームに溝の切ってある場所。
ここを先の細いツールで押してやるとカンタンに外れる。
ただし、この溝の奥にはほっそいコイル線も渡っている。 ※上記の通り
薄黄色の接着剤には触れないように、ていねいに作業しないといけない。
もし心配な場合は、もう1か所の外しポイントがある。
基板を12時方向に置いた時、4-5時あたりに四角い穴があり、ここにプロテクター板のツメが固定されている。
この四角い穴からマイナス(-)ドライバーなどでツメを押し出してやれば外せる。
(ちょっとコツが要る)
2.振動板
改めてもう片方のハウジングユニットを用意。
この薄い黄色の接着剤の中にプラス(+)とマイナス(-)の線が通っている。
この接着剤には触れず、ユニットを裏返す。
銀色ピカピカの薄い膜が振動板で、フレームの溝にコイル線がある。
なので溝側は避けて、その反対側から振動板を剥がすことにする。
フレームにある長穴を利用して、振動板を剥がせそうな“端”を見つける。
ピンセットとピンセットペンチを使いながら、振動板を剥がしていく。
振動板といっても、ぺらっぺらの薄い膜のようなフィルム。
強く引っ張ると避けてしまう。
コイル線のあるフレーム溝を残して、ほとんどを剥がした振動板。
裏返すと、振動板の中央にあるのがコイル。
とても細い銅線がキレイに巻かれている。
3.コイル
振動板の裏に貼りついて立っているコイル束。
そこから振動板を横切り、基板の方へと銅線が渡っている様子。
更に観察すると、コイルから出ているのが良く見える。
でもどう見ても1本しかない。
2本あるはず?…と思いながら銅線に纏わりついた接着剤を剥がしてみる。
しかしこの透明な接着剤、柔らかいビニルの様にとてもよく伸びる。
ピンセットにもペタペタ付いてくる。
薄いのにその粘着力はなかなかすごくて、剥がすのに苦労しながら作業。
そして突き止めた。
1本にしか見えてなかった銅線。
実は2本の束になってて2本まとめて基板端子へと渡っていた。
しかし、それが判ったのと同時に また やってしまった。
透明接着剤を剥がしてる時に、線も切ってしまった。
ドライバの復旧・・・
コイルからの銅線までは辿り着いた。
解明できたのなら復元したいところだが、それはあまりに甘すぎた。
この極細の銅線や極薄の振動板フィルムは精密で繊細過ぎる。
銅線はなんとかなっても、剥がして破れてベコベコにした振動板&コイルは、もう元には戻せない。
素人が手を出すところじゃなかった、、、
ドライバの部品
しかしバラバラ部品を只のゴミにするのは勿体ない。
せめて測定データを残しておくことにする。
ハウジング
外径は約44.5mm。
厚みは13.4mm。
重さは8.3g。磁石込み。
プロテクター
外径は約37mm。
厚みは約2.6mm。
重さは1g。
振動板
直径は約37.3mm。
厚みは0.06mm。
重さはコイル付きで0.1g。
コイル
外径は約14mm。
コイルの高さは約2.2mm。
コイル線の太さは0.11mm。
網スクリーン
ハウジング内のマグネット側に貼り付けてあった網。
厚さは0.11mm。
重さは測定できず。
マグネット
最後にマグネット。
固く接着されていて、ハウジングを破壊しないと取り出せそうになかった。
外径だけ測定、約13mm。
まとめ
前回 KSC75Xの構造を知るためにパーツのみ分解してみたが、今回はさらに奥深くドライバユニットの中身まで解体してみた。
ある程度の予想はしていたが、中身はとても繊細な作りだった。
元には戻せなくなったが、かなり詳しく構造を知れたと思うし、素人が触ってもいい限界が判ったとも言える。
KSC75(X)はこれからも愛用していく予定。
今回1つ犠牲にしてしまったが、得られた情報は修理や改造の時にきっと役立つ。