コード切れ『リール式 キャップレス9』結び直し│その手順
毎日使っているシヤチハタのリール式キャップレス9ハンコ。
ポケットにクリップ止めできて便利なアイテムだが、ほぼ毎日の使用していたら半年ほどでリール紐が切れてしまった。
印面も本体もまだまだ使える。
ヒモくらいで買い替えるのは勿体なさすぎる、
というわけでDIY修理することにした。
コード切れの場所?
直すのはシヤチハタの【 キャップレス9リールタイプ XL-CR3 】というタイプ。
本来トップにあるグロメット穴から紐(コード)が出てクリップにつながっている。
この紐(コード)がクリップの根元から切れた。
切れたコードはリール側の本体の中・・・。
これを何とか引き出して、繋ぎ直す作業になる。
リールの修理
1 修理方法
どうやって紐(コード)を繋ぎ直すか?
具体的には、
①リール巻き取り部分を分解し
②中に納まっている紐(コード)を外に引き出して
③再びクリップ部品にくくりつけてやる、という手順になる。
2 リールの観察
1)リールの分割
まずはリール部分をスタンプ本体と分離する。
本体に対して、リール側を反時計回りに約90度ねじってやると外れる。
2)リースケースの観察
グロメット穴を覗くと、奥に切れた紐(コード)が見える。
穴が大きければピンセット等で引き出せそうだが、1.5mmほどなので無理。
リール部品の外部を観察。
周りの何処にもビスやネジは見当たらず、
プラスチック2つを接着剤などで貼り合わせている構造だと推測できる。
外周の部分に指をかけ、何とか分解できないか引っ張ってみた。
しかし非力なのでどうにも無理。
万力バイスなどで広げる案も考えたが、ケース外周のプラスチック壁が変形したり割れてしまっては意味がない。
なので別の手を考えた。
3 準備するもの
ケースを分割するために、作業用の穴を開ける作戦。
直接ケース外面を触らないし、力を入れやすい中心部なので、おそらくケースを破損させることなく剥がせるはず。
使用する道具は以下の通り。
写真の左上から右下へ
- 接着剤・・・中粘度の瞬間接着剤またはABS樹脂用接着剤
- プライヤ・・・先端の細いニードルノーズタイプ
- リバースピンセット・・・逆作動ピンセット・ストレートタイプ
- ピンセット・・・先細の精密ピンセット・ストレートタイプ
- ピンバイス・・・ドリル刃の径に対応した精密ピンバイス
- ドリル刃・・・3.2mmΦくらい ほか
1)接着剤
シヤチハタ本体の材質はABS樹脂。
※メーカーさんに確認済み
分解の後、再組み立て時に必要なのでABS用か瞬間接着剤を用意。
2)プライヤ
プライヤはクリップの根元にある三角環△を広げたりするのに使用。
三角環に傷をつけたくないので、先にギザギザのないフラットなプライヤが最適。
3)ピンセット
ピンセットは紐(コード)の穴通しや結び目を作る時にあれば便利。
先端が細いストレートタイプを用意。
4)ドリル
ドリル刃は、リール部品に穴をあけるのに使用。
開けた穴にプライヤ先端を挿し込むのである程度の穴径が必要。
とりあえず3.2mmとした。
ここでは電動ドリルは使わない。
リール内部を壊したくないし、ABS樹脂は柔らかいので手作業でも簡単。
4 穴開け
ドリル刃を用意。
リール部品の裏側中心に穴を開ける。
穴開けは慎重に。
このすぐ奥には紐や巻き取りスプールがあるはずなので、ゆっくり作業する。
一気に穴が開く電動ドリルは使わない方が安全。
5 分解
開けた穴を利用してリール部品を分解する。
プライヤ先端を差し入れプライヤのハンドルを広げると、接着されていた部分が剥がれ、ケース部品が2つに分離する。
テコ原理を考えると、鼻先の短いプライヤの方が力を入れやすいかも知れない。
写真⇩ 先端が短いのは下側のプライヤ
6 構成パーツ
リールのケースを開ける。
中には紐(コード)が巻き取られたスプールがある。
先端には紐が通るグロメット金具。
スプールをさらに分解する。
仕切り板らしき丸い円盤状のパーツを外すと、奥にはゼンマイばねが見えてくる。
ゼンマイばねが解けないように注意しながら、構成パーツを分解。
紐が巻かれたスプールを持ち上げる。
仕切り円盤、スプール(ゼンマイ付き)、リールケース、全貌。
リールケース1組の接合面を観察すると、グロメットの両側、ケースはめ込み枠など、6か所に接着剤を点付けした跡がみられる。
再組み立て時は、同じ位置に接着剤を塗ることにする。
紐(コード)の巻き取りとゼンマイばねが一体になったスプール。
ゼンマイばねは、きしめん状の鋼板をクルクル巻いて作られている。
その中心部が折り返されバネ芯になっている。
仕切り円盤のバネ軸は、バネ芯を挟んだままケース側に固定される。
紐(コード)が引き出されたときは、軸がリールケースに固定されているのでゼンマイが巻かれることになる。
7 紐の修理
1)ストッパーの分解
紐(コード)は三角環にあるストッパーに結ばれていた。
なので一旦、三角環からストッパーを外してから紐を結び直さないといけない。
ここでフラットノーズのプライヤを使用。
2つ組み合わせて三角環を広げてストッパーを外す。
切れた紐(コード)の先端が出てきた。
2)紐の結び直し
紐(コード)の太さは約0.5mm。
写真⇩ 紐が切れる前(新品時)の画
切れたままの状態では毛羽だって穴に通せないので、紐の先を少しカット。
グロメットとストッパーの向きを再確認して、紐の先を止め結びする。
抜けてこないよう結び目を大きくしたいので、二重ひと結びか八の字結びで。
紐(コード)を結び直した様子。
しかしこのままでは紐(コード)が緩んだままで、元の状態ではない。
8 リールの復元
1)ゼンマイばねのセット
紐(コード)には常に”張力=テンション”がかかっていなければならない。
なのでリールケースと仕切円板を押さえたまま、スプールを1回転半~2回転。
紐を引っ張ってテンションをかけて、ストッパーをリールケース出口に渡してやる。
2)接着剤
ここからがちょっと大変なところ。
1.上記 1)で巻いたゼンマイが戻らないよう指で保持したまま、
2.反対のリールケース側に接着剤をつけ、
3.貼りあわなければならない。
塗り過ぎにも注意!
はみ出た接着剤が紐やスプール接着してしまう怖れがあるので、あくまで少量の”点付け”にすることが大事。
そして一気にケース同士を貼り合わせる。
グロメットをきちんとケース溝に収める事にも注意。
写真を撮る暇も無く一瞬の作業。
最後の処理。
見えない部分なのでどちらでもいいのだが、穴が開いたままでは気分が良くない場合、何か適当なステッカーを貼っておく。
写真⇩ (一例)A-ONEの9mmΦ数字ステッカー透明
9 クリップの復元
ここまで済めば後は組み直すだけ。
外した三角環△を元に戻す。
クリップ穴を通しストッパーの穴も通して、プライヤで三角環を閉じる。
10 完成
スタンプ本体にリール部分を戻す。
ハメ込み部分の凹凸を合わせて、時計回りに90度回せば装着できる。
元通りの姿になった。
改良
分解と修理は上記で終わり。
今後また紐が切れてしまうのを防ぐため、3か所にちょっとした改良をくわえた。
①と②は分解中の過程で、③は修理の後でもOK。
①紐の補強
紐(コード)が切れてしまった部分= 一番摩耗の激しい部分だと思われる。
切れたのはリールストッパーの根元。
ここを少しでも補強するため、紐の結び目から1~2cmくらいに瞬間接着剤を染み込ませておく。
塗り過ぎると紐が硬くなりすぎたり白化現象が起きるので、量には注意。
(自己責任で)
②スプールの潤滑
スプールと仕切り板(軸)の間には回転時に摩擦が生じる。
ここの抵抗を少しでも減らしておけば、紐(コード)への負担も減るはず。
回転時に擦られる部分に、フッ素系グリスを薄ぅく塗っておく。
ここも塗り過ぎ厳禁。
③紐の耐摩耗
リールのグロメット穴で何度も擦られる紐。
その滑りを良くしてやれば表面の摩耗も防げるはず。
ということで、紐(コード)にシリコンスプレーを塗布しておく。
このスプレー、塗布すると本当によく滑るようになる。
作業中に飛散してしまった作業場所の床までつるんつるんである。
👉注意 シリコンが付着したところには接着剤がほぼ効かなくなる
なので全ての修理が終わった後で、紐だけ引き出して塗布するのがよい。
キムワイプやティッシュ等にシリコンを吹いておき、紐を挟むようにして塗るとやりやすいと思う。
まとめ
周りでも使っている人が多い便利なリール式のハンコだが、紐が切れてしまった~という話も聞く。
そんな声を聞いてか、実はシヤチハタからリール部分だけのスペアパーツが売られていたりする。
よく聞かれるクレームなら、リール自体の構造か紐の素材を改良して欲しい、と思うところだが・・・。
キャップレス9リールタイプの価格が約1600円。
リール交換パーツが約600円。
高いのか安いのかよく判らないスペアパーツだが、工具があれば、ほぼ無料でDIY修理できる。