プッシュ切替 『マルチメータ FT-X』開封│レビュー
ステイホーム=家の中でできるコトを探りつつ始めた DIY工作室。
趣くまま作ったり直したり弄ったりしていく中で、揃えた道具や工具などを紹介。
第二十一回は“プッシュボタン式”の『電気マルチメータ』。
マルチメータのタイプ
いまさらながら、マルチメータは電気の電圧・電流・抵抗値などを調べる計測器。
電気テスターとも呼ばれていて、従来は「アナログ針の目盛」「ロータリー式の切替スイッチ」が多かった。
写真⇩ 三和電気計器の一例 (YX-361TR)
振れ幅を目で確認できるアナログ式だが、デジタル式の方が高精度で多機能なこともあり、最近のマルチメーターはデジタル式が多いとのこと。
表示だけデジタルで切りかえ操作は古来のロータリーというマルチメーターも多い。
今回は、モードり替え操作がロータリースイッチではなく、ボタン式スイッチになっている機種を試してみることにした。
プッシュ操作のマルチメータ
Amazonで見つけたのが“ToAUTO/FT-X”という中国メーカーのモデル。
デジタル表示は反転ブラックの大型液晶、文字は白色。
従来機のロータリースイッチは無く、ボタン式のモード切り替えになっている。
全く同じ機種が別メーカーからも売られていたりする。
どちらがOEM元なのか先なのかは不明。
写真⇩ RichMETERSというブランド製品
テストリード棒のデザインは違うが本体は瓜二つである。
モデル名が違うが全く同機種、というのは「中華あるある」である。
FT-X 仕様
- 9999カウント表示
- DCV999.9V/9.999Aまで測定可
- オートレンジ機能/マニュアルレンジ切替可能
- 精度 ±(0.5%+3)
- 計測頻度 3回/sec
- 温度測定 -20℃~1000℃
- リラティブ相対表示
- デューティ比測定
- 非接触検電
- オートパワーオフ機能(約5分)
- バックライト機能
実際はどんな感じなのか検証してみる。
FT-X 概要
1 開封
外箱のダンボール。
この中に更にパッケージが入っている。
パッケージ箱の大きさは、横115mm×縦187mm×厚50mm。
開封。
2 付属品
グレー色の巾着袋に中にマルチメータ本体。
他に温度測定用プローブ(黄色)、テストリード(赤黒)、取扱説明書、単三電池2本。
3 取扱説明書
取説には日本語表記もある。
日本語は予想通り怪しげに翻訳されている。
4 外観
正面から。
全体的には手に持ちやすい様に少し縊れカーブしている。
ディスプレイ部分には養生フィルムが貼られている。
LCDサイズは横57×横42mm。
表面はゆるくカーブしている。
背面。
外装は全身プラスチック。
側面。
特に操作ボタン類は無し。
半艶消しの様な質感だが、素材は割と滑りやすいプラスチック。
裏側にはスタンドがついている。
5 サイズと重さ
1.本体
幅は74mm、縦は145mm。
厚みは約35mm。
本体の重さは218g。 ※電池込み
2.付属品
テストリードの重さは45g。
温度測定プローブの重さは22g。
FT-X 使用方法
1 電池ボックス
本体裏の立てかけスタンドの中に、電池ボックス蓋がある。
プラス(+)ドライバは#0番。
必要な乾電池は単三2本。
2 電源スイッチ
ON/OFFスイッチは本体中央にある赤いプッシュボタン。
約2秒ほど長押しすると電源が入り、ディスプレイの全表示が瞬時に点灯。
その後すぐ待機モード表示になる。
3 テストリード
付属のテストリード線は柔らかめのタイプ。
線径は約3.0mm。
長さはケーブル部分のみで約65cm。
先端には保護キャップがあり、引き抜いて外せば導体ピンを長くできる。
テストリードのマルチメータ側にも保護キャップがついている。
中はバナナプラグ。
金属端子が見える。
マルチメータ下部、 テストリードのコネクター部分。
一般のマルチメータ同様の配列で4つの口がある。
黄色の注意ラベルの下に電流値(A)用が2口隠れている。
中央の黒いクネクタはCOM (黒マイナス)。
左側の赤いコネクタは、電流値専用 (写真では黄色ステッカー下)。
右側の赤いコネクタは、電流以外(電圧・抵抗・導通・静電容量etc)に共通で使用。
4 計測
1.乾電池の電圧
単三乾電池2本を直列にして、電圧を測ってみる。
テストリードの赤をマルチテスタの右側コネクタに挿し込み、電池ボックスのプラス(+)に赤を、マイナス(-)に黒をつなぐ。
テストリードにワニ口クリップを追加して電池ボックス端子を咥えている。
マルチメータのON/OFFボタン(赤色)を約2秒長押しすると電源オンに。
まだ電池ボックスのスイッチを入れていないのでレバーを左に倒してONにする。
このTAMIYA電池ボックスの場合、左側が順方向になる。
すると瞬時に電圧「3.292V」が表示された。
電池ボックスのスイッチを反対側に倒す。
今度は逆方向接続になっているので「-3.293V」と表示される。
写真⇩ 今回使用したタミヤの工作シリーズ『単3電池ボックス 70150』
2.直流安定化電源の電圧
ToolKitRCのDCパワーサプライを使用し、12.0V設定時の電圧を測ってみる。
パワーケーブル赤黒とテストリード赤黒をそれぞれ個別に接続。
P200の電源供給スイッチ(右ジョグ)を押すと12.0Vを送電。
結果、マルチテスターFZT-Xでは「12.06V」と表示された。
3.コンデンサの容量
その辺に転がっていたコンデンサ(キャパシタ)220μF を計測してみる。
テストリードの赤/黒をコンデンサの脚にそれぞれつなぐ。
脚の長い方がプラス、短い方がマイナス。
マルチメータ側は、右側の赤色コネクタを使用。
マルチメータの電源を入れると最初は「mV」を表示している。
設定そのままだと電流値計測モードなので、
モード切替ボタン(▢型スイッチ左から3つめ)を3回押して“静電容量モード”にする。
考えているのか、2-3秒ほど空白の間があって、
測定結果「232.2μF」が表示された。
4.抵抗値
その辺に転がっていた抵抗。
カラーは緑-茶-茶-金 510Ω (±5%)。
テストリードをつなぎ、マルチメータをON。
ちなみに抵抗の脚には極性がないので、どちらに+or-をつないでもOKらしい。
電源ON時は「000.0mV」表示なので、モード切替えボタンを1回押して“抵抗値モード”にする。
すると抵抗計測に変わり「508.0Ω」と表示された。
5.発光ダイオード
これまた転がっていた赤色発光ダイオードを計測してみる。
(1)電圧
まずは電圧計測から。
こちらも長い脚がプラス(+)、短い脚がマイナス(-)。
前項同様に、マルチメータ~テストリード~ワニ口クリップをつなぎ電源をON。
モード切替えボタンを2回押して“ダイオード計測モード”に。
赤色ダイオードや緑ダイオードの電圧は1.8Vが標準とのことで、ほぼ規定通りの結果を示した。
※ダイオードには方向性があるので正確には「順方向電圧」と呼ばれるとのこと
(2)電流
次に同じ発光ダイオードの電流値を測ってみる。
電流値の計測時だけは、マルチメータの左側の赤コネクタ端子を用いる。
通常は「A/mA」と書かれている左上の穴にテストリードを挿し込む。
電流値を測る場合、マルチテスターを⦅電池ボックス~発光ダイオードの回路1環の中⦆に組み込んで測らないといけない。
テストリードやワニ口クリップを繋ぎたしながらではややこしいことになりそうなので、ここでは“ブレッドボード”とよばれる電子工作用の回路基板を利用。
その他、片方がジャンプワイヤ(ピン端子)になった“ワニ口クリップ”と“テスター棒ジャンプワイヤ”も用意。
ブレッドボードはLEDやコンデンサなどの脚に合わせて作られているため、テストリードの検針チップの太さでは挿し込めない。
なので、テストリードのチップを経由できるジャンプワイヤを利用して、
マルチテスターのテストリードを間接的につなぐというわけ。
説明下手でややこしくなっているけど、やりたいことは下の写真の回路。
- 電池ボックスのプラス(+)からブレッドボードのプラス端子へ
- 発光ダイオードのアノード脚(+)につながり ※ブレッドボード内回路にて
- 発光ダイオードのカソード脚(-)からテストリードのプラス(+)につながり
- マルチメータのCOM(-)を経て電池ボックスのマイナス端子に結ぶ
これで一環の回路になって、発光ダイオードが点灯し、その電流値が測れる。
そして結果は「72.3mA」と計測された。
FT-Xの精度
仕様書による精度は最高で±0.5%となっている。
例えば「3.00V」の電圧を測定すれば「±0.45V」の振れ幅があることになるので、2.55~3.45Vの誤差が出ることになる。
±0.3%の上位機種と比べてみたいが、基準にできる標準機をまだ持っていないので、いずれ比較してみるつもり。
参考までにこちらはCUSTOMの古い機種CDM-27。
仕様書上の精度は±0.8%程度。
アルカリ乾電池2本の電池ボックスの電圧は「3.27V」だった。
まとめ
使用感
良いところ
1)ディスプレイ表示が液晶が明るく見やすい
2)セミオートで電圧(V)/抵抗(Ω) 測定を自動判別してくれる
3)室温度を常に表示している ※精度は不明
4)-20℃~1000℃を測れる温度測定プローブ付き ※精度は不明
良くないところ
1)測定値が小刻みに変動することが多く視認し辛い ※データホールドは可
2)立てかけるスタンドがついているがチャチくて不安定
3)精度最高±5%とあるが±8の誤差がある疑い → 未確認
4)モード切替プッシュボタンが引っかかって戻りが悪い
まとめ感想
測定モードを切り替える時、従来の“ロータリー式”を“プッシュボタン式”に換えてみました、という感じの機種。
何が良いかというと、片手にテストリード、片手にマルチメータ本体、という手持ち作業の場合に、プッシュボタン式なので片手の親指で操作できるメリットがある。
ただそのプッシュボタンを押した後の戻りが悪いことがあり(ゴムが引っかかる)、品質の問題だと思うが改善してほしい部分。
肝心の測定精度についてはおそらく個体差があると想われる。
仕様書にある「±5%」以内の製品に当たれば、本体の重量も軽いし見やすいしまぁまぁ使えるテスターと言える。