正確│高速『HIOKI マルチメータ DT4253』実測テスト│レビュー
『HIOKI マルチメータDT4253』準備編の続き。
今回は実際に身の周りの電池などを計測してみる。
DT4253 計測テスト
1 乾電池の電圧
単三乾電池2本を直列にして、電圧を測ってみる。
オプションの“わに口クリップ”を使用。
テストリードのピン先に挿し込む。
電圧測定なので、赤リードは右側の赤色端子に。
電池ボックスの端子プラス(+)マイナス(-)にそれぞれクリップを接続。
わに口クリップは“シリコン”でカバーされているので短絡事故を防げる構造。
ロータリースイッチは「—V」または「AUTOV」へ。
そして電池ボックスの電源スイッチを左に倒してON。
すぐ電圧値「3.263V」が表示された。
電池ボックスのスイッチを反対に倒すと逆方向になって「–3.262V」になる。
2 直流パワーサプライの電圧
ToolkitRCのDCパワーサプライP200を使用して、12.0V設定時の電圧を測る。
P200の出力(クリップ)とDT4253のテストリードを直接つなぐ。
ロータリースイッチは「—V」または「AUTOV」に。
まだ給電をしていないが、つないだだけで「0.6mV」を計測している。
微電流が流れている?
12Vを給電するためP200の右ジョグをクリックしてON。
同時に「12.07V」を示した。
3 コンデンサの容量
220μFのコンデンサ(キャパシタ)の静電容量を測ってみる。
テストリードの赤/黒をコンデンサの脚にそれぞれつなぐ。
コンデンサは、脚の長い方がプラスで短い方がマイナス。
テストリードのマルチメータ側は、右側の赤色端子と黒色のCOMを使用。
ロータリースイッチは「┫┣」に。
「0.245mF」と計測結果がでた。
※0.245mF=245μF
ちなみに、この計測には約8秒も時間がかかった。
コンデンサ容量の大きさで時間もかかるものらしい。
以前試した中華製品は2-3秒だったのでこれは遅く感じる。
4 抵抗
次に510Ω(緑茶茶金)の抵抗を計測してみる。
わに口クリップで抵抗の両端をはさむ。
ロータリースイッチは「Ω」の位置に。
「512.1Ω」と測定結果がでた。
5 発光ダイオード
赤色発光ダイオードを計測してみる。
1.電圧
まずは電圧。
ダイオードの長い脚がプラス(+)短い脚がマイナス(-)。
わに口クリップでそれぞれくわえる。
LEDがわずかに灯っているのが見える。
ロータリースイッチを「▶ꡲ」に回すと、、、
「1.500V」を示し「OVER」の文字と共に ‷点滅フラッシング‴ する結果に。
点滅オーバーって何?ダイオード破損?マルチメータ初期不良?
と調べてみたら…DT4253の仕様のせいだった。
仕様書によれば『ダイオード測定の閾(いきorしきい)値は0.15~1.5V』とある。
つまり1.5VをOVERしてしまったので点滅した、というのが理由らしい。
過去に扱った他機種(例えばKAIWEETS KM601)などでは問題なく「1.824V」と計測できたので、ちょっと残念なところ。
写真⇩ KAIWEETSのKM601
KM601の過去記事は ➡ こちら。
2.電流
同じ赤色ダイオードの電流値を測ってみる。
電流値なので、マルチメータを電源~ダイオード回路の中に割り込ませて1つの環にしないといけない。
ブレッドボードを使って簡単な計測用の回路を作ってテストした。
【注意】
乾電池1.5V×2=3.0Vにダイオードを直結させたら普通は壊れてしまう。
なので抵抗を入れるのが基本だが、本マルチメータを通しての発光ダイオード電流計測なら壊れないらしいので、今回は抵抗無しとした。
もちろん自己責任。
電池ボックスのスイッチを入れるとLEDが点灯。
結果は「40.85mA」であった。
6 温度
温度測定には別売オプションのDT4910熱電対センサが必要。
仕様書では「使用範囲 -40~+260℃、許容差 ±2.5℃」となっている。
1.外観と準備
赤色(+)端子と黒色(COM)端子が一体になったプラグ。
熱電対ワイヤーは平たいきしめん状(茶色)をしている。
長さは約80cm、幅は2.2mm×1.25mmほど。
先端センサの露出部分は約10mm。
一体型のプラグをDT4253の端子に装着する。
この一体型プラグ部分が意外に大きく、高さは10cmほどになる。
ちょっと邪魔くさい。
2.計測テスト
まずは室温から。
熱電対センサ先端はDT4253から上方に5cmほどの位置。
他の室温計では24.5℃前後だが、DT4253は「1℃高い」数値を示した。
デスクトップPC簡易水冷ラジエターの排気グリル部分。
DT4253は55.0℃を計測。
このPCにはCORSAIR『COMMANDER Pro』の温度センサを取り付けている。
計測場所はほぼ同じ、その数値は57.10℃だった。
-40℃まで測定範囲とのことなので、マイナスなものも計ってみた。
おやつに頂いた明治のスーパーカップアイス。
内部温度は-11.0℃だった。(もちろん消毒済み)
まとめてみれば、仕様上の誤差は±2.5℃なので、どの計測もそこそこ範囲内と思われる。
7 PC通信
PCとのUSB接続するためには別売オプションのDT4900-10が必要。
こちらはまだ予定がなく未購入なのでテストできず。
8 計装信号
DT4253の特徴の1つが微小電流「4-20mA」を計れることだが、こちら使用予定が無いので未検証。
まとめ
使用感
良いところ
本体もテストリードもさすが日本製といいたくなる精度の良い造りである。
オモチャっぽさのある中華製とは格が違う。
デザインはごく普通で目を引く奇抜さは無いが、ブルーのホルスタ(カバー)とグレーの本体はシンプルで良いデザインだと思う。
スイッチの操作感も、その反応にも何の問題も無い。
性能確度についても(信頼してるので)問題無し。
我工作室の“基準機”として長く使っていけそうである。
良くないところ
ただ細かく見れば不満な点も少しある。
1つめ。
立てかけスタンドを収納する時、ホルスタの角にツメを引っかける構造になっているのだが、それが浅くすぐ外れてくる。
もっときちんとハメ込める強固さがほしい。
2つめ。
テストリードプラグには保護カバーがあるのに、マルチメータ側のジャックには保護カバーがない。
上位機種にあるような防塵/誤挿入カバーを是非つけてもらいたい。
3つめ。
液晶のバックライトは透過光バックライトではない。
液晶下部から照らす白色LED光である。
反射光は表示が薄く見えてしまう時があるのではちょっと残念。
4つめ。
約390gあるのは少々重い。
この性能レベルのマルチメータなら他社と変わらないことも判っているが、ハンディタイプならもっと軽くなって欲しい。
5つめ。
オプションの携帯ハードケースの作りにも不満がある。
本体がぴったり収まるのは良いのだが、肩掛けベルト部分に自由さが無い。
完全にベルトを取り外すことはできないし、これ以上(写真⇩)短くも出来ない。
ハードな造りは良いのだが、ベルトが邪魔な時にやや使い辛いかも。
6つめ。
使い慣れてないせいだろが、温度計測が使いにくい。
嵩張るプラグ端子もそうだし、中途半端に硬い針金ワイヤーもそう。
また対象物に熱電対先端を挿し込むと「OPEn」表示でエラーが頻発。
力をかけてはいけないのだろうが、ちょっと強く挿し込むとすぐエラー。
もっと強度のある先端センサーであってほしい。
あとは・・・価格がちょっと高いのがネック。
同じ性能(真偽は別にして)の中華製品では数千円で購入できるので、日本メーカーにももっと頑張ってほしいところではある。
まとめ感想
いろいろ不満も上げてみたがまぁ些細な部分。
機能も構造も日本製は素晴しい。
海外製に負けない高品質なハンディ型スタンダード機である。